天津武田薬品有限公司

【Tianjin Takeda Pharmaceuticals Co., Ltd】拡大する中国市場を攻める武田の生産拠点 年50%超の成長戦略に向け生産ラインを拡張



日本で最大の医薬品メーカーである武田薬品が、中国市場を積極的に攻めている。2011年1月、それまでは合弁会社であったTianjin Takeda Pharmaceuticals Co., Ltd(天津武田薬品有限公司)を100%子会社化し、アグレッシヴに資本投下を行っている。2015年に中国での売上高を 2010年比で10倍以上に拡大させるという目標の下、今後数年は、セールス部門の強化を行い、年50%以上の成長を見込んでいる。成長戦略ならびに供給戦略等について同社董事長の中谷昭氏に聞いた。

中谷昭氏
Tianjin Takeda Pharmaceuticals Co., Ltd (天津武田薬品有限公司)
董事長


‒‒御社の業務を教えてください

現在、天津武田薬品有限公司は、中国における武田薬品の製造子会社です。その他に武田薬品の中国事業を担っている子会社としては、ホールディング・カンパニーの「武田(中国)投資有限公司」と、販売・マーケティング機能を有する「武田薬品(中国)有限公司」があります。製造と販売の役割分担を明確にすることで、各々の会社が専門機能に特化出来るようにしています。

弊社で製造しているのは、主に中国市場向けの処方箋薬(医療用医薬品)であり、糖尿病治療薬、高血圧治療薬、胃潰瘍・十二指腸潰瘍治療薬、前立腺ガン治療薬などがあります。これらの医薬品を販売子会社や卸を通じて医療機関に納入しています。弊社の製造形態には、原料を日本から輸入して製剤化&最終包装まで手掛けるものと、半製品を日本から輸入し、包装のみ行うものがあります。また日本経由で欧州向けに出荷する来料加工も行っています。


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‒‒天津ではいつから活動をされているのでしょうか

天津武田薬品有限公司の歴史は古く、設立は1994年です。当時は独資での会社設立は認められていませんでしたので、同業となる製薬会社の天津力生製薬股份有限公司と合弁という形でした。その後、16年間は合弁という形で、事業を進めて参りました。その間、1996年には合弁企業として初めてGMP(Good Manufacturing Practice)資格を中国政府から取得しています。

但しこの間、ビジネスが順調に進んでいたというわけではなく、売上の伸びは停滞しておりました。それが大きく変わったのが2011年1月です。武田薬品が天津力生製薬が保有する持分を獲得し、100%子会社としました。

この背景にあるのは、拡大する中国市場に遅れをとることなく武田薬品の売上を拡大したいという思いです。現在、医薬品の市場は米国が1位、日本が2位です。但し、2015年にはこれまで年率25~30%で成長してきた中国市場が、日本を抜いて2位になると見込まれています。これまで武田の海外展開は欧米の先進国が主流でした。中国を始めとする新興国市場に乗り遅れると、武田の将来は危ういという危惧がありました。そのため、合弁関係を解消し、武田単独で中国市場に本腰を入れて取り組むことを決定したのです。

昨年の弊社生産量は前年の約2倍に達しました。今後、数年間は毎年50%以上で伸長する計画を策定しています。

‒‒2011年10月にはスイスの製薬大手ナイコメッドを買収しました。

同社の買収金額は1兆円以上と非常に大きかったこともあり、マスコミ各誌にも大きく取り上げて頂きました。ナイコメッドは、その売上の多くをロシアや中南米など新興国で上げています。また、中国にも製造工場と販売拠点を有しています。

このように武田薬品として、先進国だけでなく新興国も積極的に展開していき、グローバル化を更に押し進めていこうという大きな流の中で中国ビジネスにも力を入れていきます。例えば、医薬情報担当者(MR)は、旧ナイコメッド除きで現在の約300人を2015年までには3倍強の900人に増やそうという計画があります。

‒‒なぜ、中国の拠点が天津だったのでしょうか。

前述のとおり、合弁企業を立ち上げたのは1994年です。当初から、この西青経済技術開発区に拠点を構えておりました。当時の関係者が現在はいないので確実なことは言えませんが、他の日系製薬企業が進出していたこと、パートナーである天津力生製薬股份有限公司の本社が天津にあったこと等も理由であったと思われます。ここ天津で活動をしてみて感じるのは、北京、上海、広州といった所謂一線都市の次に位置づけられる準一線都市であることのメリットです。人件費は北京、上海ほど高くはありません。一方で生活環境は整っています。更には、大きな港や国際空港があり、高速道路網や新幹線を始めとする鉄道網も発達しているなどインフラも整備されてます。また、古くから設立されている有名な大学もあり、優秀な人材も確保し易い環境にあります。そういう意味で、天津は、日系製造企業の進出先としては、最高の条件が整っていると言えるのではないでしょうか。

‒‒武田薬品の100%子会社になってからどのように変わりましたか。

中国市場に本格的に取り組もうということで、この工場も大きく変わろうとしています。例えば、建物に関してですが、設立当初から、ほとんど手を入れてこなかったこともあり、老朽化が進んでおり、改修が必要ということになりました。雨漏りの修繕をしたり、外壁のタイルを交換した他、インテリアも大幅に改装し、従業員が快適に仕事をできる環境を整えているところです。

また、生産ラインについても現在増強を実施しています。年々増加する販売子会社からの需要に応えていくためには、現在の生産能力では限界があります。そこで、メインの包装ライン2本のうち、1本を現在、自動化しています。7月~8月には稼動できる予定です。また、もう1本の包装ラインに関しても、今年度中には自動化の目途をつけたいと思っています。一方で、その前工程となる製剤化の生産ラインでは、2交代制などで稼働率を上げることも、考えています。


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このように、武田の100%子会社になってからは、天津武田が主体となって様々な改善にチャンレンジしています。その為に、難題に直面することも増えています。例えば、中国当局との解釈の違いから、行き詰ってしまうこともあります。そのような場合には西青経済技術開発区の方に相談をすると、当局との間に入って頂いたり、或いは協議の場を設けて頂く等、解決に向け全面的に支援して頂いております。

これまでは合弁パートナーである天津力生製薬が開発区との窓口になっていました。現在、直接開発区の方々とやり取りさせて頂くようになって感じているのは、我々日系企業の立場に立って、親身になって支援して頂いている、ということです。

また、西青経済技術開発区には日系企業が100社近く進出していると聞いていますが、開発区が主体となって交流会を企画して下さったりもしています。このような場では、日頃自社で悩んでいる課題に関して、有用な情報交換が出来るなど、非常に有意義なものとなっています。

‒‒今後の展開について教えてください。

武田薬品は、ナイコメッドを買収したことで、世界で12番目の売上を誇る製薬企業となりました。そして、更なる高みを目指して積極的に新興国市場を開拓していこうということが目標として掲げられています。この中国においても2020年には1,200億円の売上を達成していこうという高いハードルが設定されています。このハードルをクリアできるように、生産能力を着実に増強していこうというのが、天津武田の目標です。但し、人員は30名程度の増員に抑え、生産性の向上を図ることを計画しております。

その後は、武田薬品がどのような戦略を掲げるかで、天津武田の位置づけも変わってくるとは思いますが、中長期的には、低コスト生産体制の構築の成否が鍵になると考えています。それが可能となれば、中国国内に供給するのみならず、海外向けに供給する製品比率を高めていくことが出来、牽いてはグローバル供給体制の一翼を担うことも出来るのではないかと思っています。また、処方箋薬だけでなく、OTC(市販薬)なども手掛ける可能性もあるかもしれません。
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