古くから中国の北の玄関口として栄え、様々な工業製品を生み出し、そして現在は著しい発展により、中国の経済成長をけん引している天津市。 同市の数多くある開発区の中でも、特に勢いのある開発区として、中国進出を目論む大企業ばかりでなく中小企業の間でも注目を集めているのが西青経済技術開発区だ。同技術開発区が位置する西青区の副区長である劉啓閣氏に、西青経済技術開発区の特徴や産業育成の考えなどについて聞いた。

西青区人民政府 劉啓閣氏
西青区副区長

‒‒ 事業の概要を教えてください。天津はどのような都市なのでしょうか。まず歴史や文化の面から紹介してください。

天津は中国に四つある直轄市の中の一つになります。中国北方にある最大な沿海開放都市、中国近代工業の発祥地、中国北方の海運と工業中心、そして中国首都北京の門戸など様々な役割を持っています。

天津は600年以上の歴史を持ち、中国の文化名城の一つです。19世紀末以降、天津は中国北方開放の最前線として、鉄道、電報、電話、郵政、鉱業などインフラ建設の先頭に立っていました。その時には、中国で第二番目の工商業都市であり北方最大の金融貿易中心でした。新中国の建国後、天津の工業は目覚しく発展し、中国で最初の腕時計、最初の自転車、最初のテレビ、最初のカメラ、最初の太陽電池は、すべて天津で誕生したのです。天津は中国北方で最も重要な工業基地となりました。現在では、天津のGDPは1万億人民元を超えて、経済の伸び率は長年にわたり連続で中国で最高となっており、環渤海地域をリードし、中国の経済成長の第三極となっていきます。

天津は、豊かな歴史と文化遺産を持っています。中国の民俗芸術の都としてよく知られています。「楊柳青」(木版の年画)、「泥人張」(人形)など民俗文化は中国で非常に有名です。また、「桂発祥」(麻花、揚げた菓子)、「狗不理」(肉饅頭)、天津甘栗なども国内外で広く知られています。

‒‒ 天津は今後どのような都市を目指して行くのでしょうか。また、西青経済技術開発区の特徴を説明してください。

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天津市は国家に認可された都市機能を持ち、現在は京津翼地域(北京、天津、河北省)を中心にして環渤海区域にもサービスを提供しています。今後は東北地区も含めて全面的な中国北方の国際港湾都市と北方経済中心とエコ都市を目指していきます。

西青経済技術開発区ですが、中国の他の開発区と比べて、様々な点で特徴があります。以下に代表的なものを五つ挙げます。

第一は、西青経済技術開発区は国家級の開発区であることです。国家から開発区に対して、各種の優遇政策が実施されています。

第二は、天津市内中心部の開発区であることです。西青経済技術開発区は天津市の政治、金融、人文、レジャー、展示センターといった中心地域に接しており、また外環状線と天津市最大のエコロジー住宅団地である梅江エコロジー住宅団地に隣接しています。ダボス会議が何回も開催された梅江展示センターは、天津の国際シンポジウムや展示会のメイン会場となります。

第三は、地理的に恵まれている開発区であることです。西青経済技術開発区は天津駅に12km、天津濱海国際空港に15 km、首都国際空港に120 km、天津港に30 kmというそれぞれ位置関係にあり、天津市の航空輸送、海上輸送、道路や鉄道の地上輸送といった立体交通網に囲まれています。

第四は、産業集約度が高く、日系企業が集中していることです。現在、西青経済技術開発区には既に電子情報、自動車関連、バイオ医薬といった三大柱となる産業が確立されているとともに、個人ケア用品、工作機械、現代サービス業といった加速的に集約されつつある三大産業があります。日本からの投資は、開発区のほぼ三分の一を占めています。代表的な企業としては、松下電子部品、ローム、豊田通商、本田技研工業、デンソ-、富士フイルム、タカタ、武田薬品工業、ロート製薬、大塚製薬、田辺三菱製薬、ユニ・チャーム、三井化学、日立物流、三菱商事、豊和工業、トピー工業、イオンなどがあります。

第五は、豊富な知的資源です。賽達人的資源サービスや西職労務サービスといった派遣会社を設立しており、約5万人に対して人材募集や人材開発,研修などのサービスが提供できます。また、企業と開発区,学校の三者が積極的に提携して、専門人材育成クラスなどを設置しています。技術者として育成クラスで2、3年の研修に参加、卒業すると、指定された工場で仕事ができます。また、開発区には投資サービスセンター、西青税関などがあり、ワンストップでのサービスが提供できます。また、金型協会などの協会があり、日本においては日系企業の卒業総経理OB会も設立してあり、様々なチャンネルを通じて、開発区と企業また企業間のコミュニケーションが強化されています。

‒‒ 目指す都市を実現する上で,西青経済技術開発区の位置付けを教えてください。また,西青経済技術開発区の重点産業についてお聞かせください。

天津市の発展目標を実現させるため、これからの数年間以内に、西青経済技術開発区は国家級開発区の優位性を充分に活かし、主に西青経済技術開発区に管轄される土地の拡大と産業群の集中に取り組んでいきます。今後5年間の域内GDP、財政収入などの主な経済指標の年平均伸び率を、25%以上で伸びるように確保します。

産業面では、西青経済技術開発区はハイエンド産業を集中したエリアになることと、科学技術創新の動力源となることを目指しています。前述しましたが、電子情報、自動車関連、バイオ医薬の三つの柱産業、高級個人ケア用品、工作機械、現代サービスの三つの発展産業を一層強化します。産業チェーンにおいて付加価値が高い部分を発展させ、中国北方における電子情報産業基地、自動車関連製品基地、個人ケア用品最大産量基地、漢方薬の研究開発生産基地を建設します。同時に開発区内の企業に対して技術創新を激励し、試験室、技術センター、研究開発センターの導入を積極的に支援しています。これらの施策により、ハイテク企業の数を開発区内企業総数の20%以上、ハイテク企業の生産額は開発区生産額の40%以上となるように努力します。

次に西青経済技術開発区の重点産業の情況ついて、簡単に説明します。まず、電子情報産業です。西青経済技術開発区における電子情報産業の生産高は、天津市の電子情報産業の約50%を占め、これは中国全土の生産高の2%を占めることとなります。現在、電子情報産業の中には五つの産業群が形成されています。中国Semiconductor Manufacturing International Corporation(SMIC)、米Freescale Semiconductor、ロームを代表とする集積回路産業群、サムソン通信、Jabil Circuit社、VIA Technologies社を代表とする携帯電話産業群(年間携帯電話の生産台数は開発区内で1億台。中国最大の携帯電話生産基地であり、開発区内で携帯電話を構成するすべての部品を調達できる)、松下電子部品、三和電機を代表とする電子部品産業群、サムソン光電子、通広サムソン、富士フイルムを代表とする消費電子産業群、双葉電子工業、ロームメカテックを代表とする電子金型産業群です。

続いて、自動車関連産業です。西青経済技術開発区の所在区である西青区では、乗用車、エコカーなど多種類の自動車が生産され、年間の生産量は45万台に達しました。現在は、自動車エアコン、ステアリングシステム、歯車ダイカストといった製品の生産基地が形成されています。主な代表企業としては、デンソー、ジェイテクト、タカタ、三電汽車空調、アスモ、槌屋、津田工業、ソミック石川などがあります。西青経済技術開発区 はアジアにおける最大の自動車エアコン部品の生産基地です。また、ジェイテクトの西青工場は中国における最大の自動車ステアリングシステムの生産基地であり、三電汽車空調はサンデンが中国において投資規模の一番大きい自動車エアコンの生産工場です。

3番目はバイオ医薬産業です。現在は心脳血管、抗菌及び抗がんの三大カテゴリ薬品の生産基地となっています。ロート製薬、武田薬品工業、田辺三菱製薬に加えて、中国国内で有名な漢方薬のメーカーである同仁堂、力生製薬、康�合生物などの優良医薬企業があります。これらの代表企業の製品、例えばランソプラゾール(Lansoprazole)、カンデサルタン シレキセチル錠(Candesartan Cilexetil Tablets)、Diltiazem(ジルチアゼム)、インダパミド錠(Indapamide Tablets)、OTC目薬などは国内外でよく売れています。すでに、西青経済技術開発区内には2km2の敷地面積を誇るバイオ医薬産業パークが開発済みで、天津市のバイオ医薬産業をリードしていると言えます。

最後は個人高給ケア用品産業です。ユニ・チャーム、P&G、恒安、ブルームーンなどの代表企業があります。そのうちユニ・チャームは、中国北方における最大の個人ケア用品生産基地を建設しています。P&Gの西青工場は、同社のアジア太平洋地区における最大の生産基地になっています。ブルームーンの西青工場は、ブルームーン・グループの中国北方の生産販売基地となっています。これらの企業が販売する「マミーポコ」、「ソフィ」、「パンパース」、「ウィスパー」、「Head & Shoulders」、「Rejoice」、そして「ブルームーン」ブランドのハンドソープなどは,いずれも中国市場においてシェアの先頭に立っている。

‒‒ 西青経済技術開発区は,重点産業をどのようにサポートしていきますか?また,今後の誘致戦略について教えてください。特に,中小企業の支援対策をお聞かせください。

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西青経済技術開発区は主に政策支援、インフラ施設、人材及びサービスなどの方面で重点産業の発展をサポートしていきます。一つひとつ説明していきます。

最初は政策の支援についてです。西青経済技術開発区は国家級の開発区として、国家及び天津市から国家級開発区に与えられる関連政策を享受できると同時に、西青区政府からも重点項目においては支援政策をもらえます。例えば、科技型中小企業(天津において政府から支援をもらえる中小企業の一種、該当企業になるためには申請が必要)の発展を支持するために、毎年西青区から1億人民元以上の支援資金があります。壮大期科技中小企業(天津において政府から支援をもらえる中小企業の一種、該当企業になるためには申請が必要)を申請し、かつ専門家委員会から許可をもらった場合、100万元~500万人民元の無償支援をもらえます。また西青経済技術開発区は、ハイテク企業も積極的にサポートしており、許認可を得てハイテク企業になった場合、企業の所得税が15%というメリットを享受できます。

二つ目はインフラの支援についてです。我々は企業の生産環境、そして生産に関与するサプライヤーの環境、並びに従業員の生活環境の改善に取り込んでいきます。産業が発展する過程において発生する様々な需要に基づき、重点的にサプライヤーに関するプロジェクトを導入し、産業の発展をサポートします。例えば、携帯電話及び自動車産業にとっては金型企業が必要ですので、我々は双葉電子工業、ロームメカテックなど30社余りの金型企業を誘致しました。また、企業にとっては物流が必要ですので、日本の日立物流、シンガポールのグローバル・ロジスティクス・プロパティーズ(GLP)、オーストラリアのGoodmanなどの物流企業を誘致しました。

企業の投資額を減少させるために、政府が出資して、150万m2のモデル工場、そして3万5000人を収容できるマンションを建てました。また、西青経済技術開発区における日系企業の発展をサポートするために、三菱商事と合作して日本中小企業総合産業パークを建設する計画です。重要とされる業務以外は、開発区が持つ関連機関に依頼することが可能です。

西青経済技術開発区は生活関連施設を充実させることにも力を入れています。現在、西青経済技術開発区において最大となる16万m2イオンのショッピングモールが建設中です。更に、西青経済技術開発区の振興産業パークのところに、4万m2の日本商店街を建設する計画があります。既に日本の宝藤ラーメン、緑膳弁当などの飲食店を誘致しました。このように、日本人駐在者の方々が本場の日本料理を食べられるように取り組んでいます。さらに駐在者の子供たちのために、日本人学校も誘致しました。また、日本人が経営する歯科や胃腸科などのクリニックも積極的に誘致中で、日本式の医療サービスを充実していきたいと思っています。

三つ目は人材の支援についてです。企業に優秀な人材及び専門技術を習得した人材を提供できるように、人材支援政策を制定しました。特別な人材に対して最高300万元の科学研究補助金を提供します。また企業の設立を補助するために、リーダーとなる人材に対しては最高100万元の生活補助金を提供します。

最後はサービスの支援についてです。企業に対して、多元化のサービスを提供します。西青経済技術開発区の外に出なくても、日常の運営事項を処理できるように、ワン・ストップサービス・センターを設置しました。その他、企業に対して迅速に各問題に対応できるように、専門の人々を配置したインターネットの窓口を設置しました。また、定期的に経営者むけの座談会やサロンなどを行うと同時に、協会員の提携関係を深めるために、電子情報、自動車サプライヤーなどの協会を設立しました。

東日本大震災とタイの洪水による影響を受け、技術ノウハウを持った日本の中小企業が中国に進出の意欲を持っていると聞きます。そのような考えをもつ企業を支援できるように、今年の7月をめどに、東京の千代田区紀尾井町に西青経済技術開発区日本代表所を設立する予定です。ここで西青経済技術開発区に進出しようとする企業に対し、支援とサービスを提供します。

西青経済技術開発区には、流暢な日本語が話せる外資誘致チームがあり、チームには16人が所属しています。企業に対して“終身制”のサービスが提供でき、日本の言葉が通じる日本的な雰囲気を作りました。西青経済技術開発区のサービス理念は、「何千何万の綺麗な言葉を並べるより、企業のために小さな困難を一つでも解決することが重要だ」です。

‒‒ 特に日本企業に望む点についてお聞かせください。

日本は世界第三位の経済大国として、技術革新、企業管理、市場開拓など方面において、たくさんの経験を積み重ねてきました。自動車、電子、バイオ医薬、及び造船などの業界において、日本は非常に発展しており、世界のトップレベルに位置しています。先進国や発展途上国の模範であるとも言え、中国の企業にとっては、本当に学ぶべきところが多いと思います。

 日本の大地震やタイの洪水の影響で、多くの中小企業が中国に進出することを考えているようです。中日国交正常化40周年を機に、中日民間の交流を深めるため、日本の中小企業のこのような考えに合わせて、我々は給電力の供給や人材の提供などにおいて、日系企業のご要求を十分に満足させます。日系企業には西青経済技術開発区の優位性を十分に利用し、西青経済技術開発区とともに発展を遂げてほしいと望んでいます。

‒‒ 日系企業に対してメッセージをお願いします。

西青経済技術開発区は国家級開発区として、現在もっとも大事な仕事は、日系企業の中国進出と中国での発展にサポートすることです。どのような企業に対しても、規模や業界にもかかわらず平等的に歓迎し、最大のサポートと支援を致します。日系企業に、西青経済技術開発区の立地条件、産業及びサプライヤー環境などの各方面の優位性、並びに西青経済技術開発区における日系企業群の集中による優位性を十分に利用して、西青経済技術開発区における日系企業の雰囲気に馴染んでいただき、西青経済技術開発区とともに更なる素晴らしい明日を創っていただくことを我々は望んでいます。

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